毎日・世論フォーラム
第304回
平成30年1月24日
毎日新聞政治部長 佐藤 千矢子

テーマ
「2018 今年の政治、政局の動き」

会場:ホテル日航福岡

自民党総裁選、憲法改正が2大テーマ
~毎日新聞政治部・佐藤部長が講演~

佐藤 千矢子 毎日新聞政治部長
佐藤 千矢子 氏

プロフィール

佐藤 千矢子
(さとう ちやこ)

1987年毎日新聞社入社。長野支局を振り出しに90年から政治部。経世会分裂や梶山静六元官房長官を担当。2001年からワシントン特派員。第1次安倍政権で首相官邸キャップ。2013年から論説委員(外交・安全保障担当)を4年間務めた後、昨年4月より現職。毎日新聞では初の女性政治部長

 第304回例会は、毎日新聞の佐藤千矢子政治部長が「2018 今年の政治、政局の動き」と題して講演、会員150名が熱心に聞き入った。佐藤氏は今秋の自民党総裁選について「安倍首相の3選が有力」との見方を示しながらも、毎日新聞の世論調査で3期目続投への支持が低迷しており「長期政権になって国民に飽きがきている面がある」と分析。首相周辺には複数候補による選挙で批判票を分散させたい狙いがあると指摘した。
 また、後半はRKB毎日放送の壽老麻衣アナウンサーが「女性の政治参加」について佐藤氏にインタビューした。講演要旨は次の通り。

 改憲を巡っては「秋の臨時国会で発議されるというのが永田町の相場観。2019年は政治外交日程が目白押しなので(同年夏の)参院選前までに国民投票をやりたいということで日程を考えている」と述べた。今年の政局を考えた時、自民党総裁選、そして憲法改正が外すことのできない2大テーマなので、今日はここに絞って話したい。
 まず自民党総裁選の行方だが、安倍晋三首相が今年9月の総裁選で3選されると2021年9月までの長期政権になる。これはかなり有力だが、死角がないわけではない。今のところ安倍首相、自民元幹事長の石破茂さん、総務大臣を務めている野田聖子さんの3人の三つどもえの戦いになるというのが有力と言われている。毎日新聞の世論調査では、2021年9月まで安倍さんが総裁を続けた方がいいですかと聞いたところ、37%しか支持がない。一方で安倍さん代わった方がいいという方は47%。10%も代わった方がいいという人が上回っている。これは安倍さんと安倍さん周辺にとっては悩み深い数字といえる。この傾向は毎日新聞だけではなく、だいたいどこの世論調査でも共通している。安倍さんも長期政権になって、少し国民に飽きがきているという面がある。去年秋の衆院選では自民党が圧勝したが、選挙戦でいろいろ厳しい声も聞いたみたいだ。去年の衆院選で自民は勝ったが、永田町の雰囲気は少し変わってきていて、安倍さんへの批判や異論が少し表に出てくるようになった。それは今年総裁選があることももちろん影響している。もっと言えば安倍さんの長期政権がそろそろ長いね、といろんな人が感じているというところがあるのかなと思っている。
 ではどういう総裁選になるのか。先ほど3人の争いと言った。安倍さん、石破さん、野田さん。この三つどもえが有力だ。首相官邸は石破さんも立って野田さんにも出てもらいたい。安倍さんは石破さんと一騎打ちの対決をしたくない。一騎打ちになってしまうと安倍さんへの批判がクローズアップされてしまう。三つどもえの戦いになれば三者三様にいろんな議論を戦わせて一対一の戦いよりも安倍批判という色合いが薄まる。批判が先鋭化しないのでクローズアップされないですむということを安倍さん周辺は考えている。
 総裁選を考える上でのポイントだが、2012年の総裁選で石破さんに地方票あるいは第1回投票で負けた雪辱をしたいということを安倍さんは今回考えている。これを何としても上書きをしたい、と首相官邸が考えていると取材の中で伝わってくる。だからこそ石破さんと戦って地方票でも圧勝して完勝したいということだろう。
 もう一つ、憲法改正について。安倍さんって本当に憲法改正をやるつもりなのか。政権延命のための材料なんじゃないかという質問をよく受ける。私は政権の延命とか政権のエンジンとして憲法改正を利用しているというのは、ややうがった見方なのではないかと思っている。安倍さんは本当に憲法改正をやろうとしているし、やりたいんだと思っている。憲法改正をやらなければ3期目をやっても仕方ないぐらいに、もしかしたら思っているかもしれない。よく言われているように、おじいさんの岸信介元首相が憲法9条改正をやりたくてできなかった。おじいさんがやり残したことをやりたい。そして歴史に名を残したいと思っているんだと思う。
 自民党は3月の党大会までには安倍さんが言っている改憲案でまとめたい。その上でどこかの時点で国会に改憲議案が出てくる。早ければ、始まったばかりの通常国会を延長して、一番終わりのところで出してくる可能性があると言われていた。だが今一番有力だと言われているのがこの通常国会の後、秋の臨時国会で改憲議案が発議されるのではないか、というのが今の永田町の相場観になっている。秋に発議されたとすると、じゃあどこで国民投票があるのか。
 2019年は春に統一選があり、天皇陛下のご退位があり、夏に参院選があって、G20という大きな国際会議が日本で初めて開催され、10月には消費税率が10%に上がる。2019年は政治日程、外交日程が目白押しの年だ。憲法改正をしようとするなら、なるべく2019年の前にやりたい。遅くとも参院選と国民投票を同時実施する。同時実施にするんだったら、天皇陛下のご退位、皇太子殿下のご即位が終わった後に発議して、2カ月ぐらいでぱっとやってしまうと。そういう案もあるが、いずれにしても2019年、あまり日がたたないうちにやらないととても忙しいことになってしまう。できれば参院選前にやりたいということで日程を考えているようだ。

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