毎日・世論フォーラム
第285回
平成28年3月16日
東京都知事 舛添 要一

テーマ
「東京一極集中と地方創生」

会場:ソラリア西鉄ホテル

道州制型の制度導入が必要

舛添 要一 東京都知事
舛添 要一 氏

プロフィール

舛添 要一
(ますぞえ よういち)

1948年11月、北九州市出身の67歳。71年6月、東京大学法学部卒業。79年に同大教養学部政治学助教授に就任、89年まで務めた。01年。参議院(比例)で初当選。07年、安倍内閣で厚生労働大臣に就任。以降、福田内閣、麻生内閣と3代の内閣で厚労相を務めた。10年、自民党を離党し自らを代表とする『新党改革』を結成したが「党勢拡大を果たせなかった」として、13年、期満了に伴い参議院を引退した。14年、東京都知事選に立候補。211万票を獲得し他候補に大差をつけて初当選。就任3年目を迎え、今後の都政が日本に何をもたらすか注目される。

 第285回例会は、舛添要一・東京都知事が「東京一極集中と地方創生」と題して講演、会員200名が参加した。舛添氏は、「地方創生もいいが国の仕組みを根本的に変えないと駄目だ。47都道府県をやめ『九州』『四国』など大きなブロックにすべきだ」と述べ、道州制型の制度導入が必要との認識を示した。東京一極集中について「東京は47都道府県を引っ張る機関車であり、我々が走るのを止めたら全部止まってしまう」と指摘。2020年の東京五輪・パラリンピックを「日本再生の最後のチャンス」と位置づけ、関連事業を全国の中小企業が受注できる仕組みを構築する考えを示した。講演要旨は次の通り。

 東京の取り組みを説明するに当たって最初に一言申し上げますが、「東京の独り勝ち」だとか「東京一極集中」と言っても始まらない。むしろ「地方もしっかりして下さい」と私は言いたい。地方は、自らが持っている資源を十分活用してないのではないか。今は国と国よりも、ロンドン、パリなど都市間の競争が激しくなっている。その中で2020年の五輪・パラリンピックがある。これは日本再生の最後のチャンスだ。最大限活用しないといけない。
 一極集中の話ですが、東京は47都道府県の機関車であり、我々が走らないと全部止まる。東京の他に機関車になれるのは愛知県、神奈川県、大阪府ぐらい。豊かな都府県と、そうではない道府県が4対43では負けるに決まっているのに、今はその4地域から金を取り「貧しいところにばらまけ」という感じになっている。地方創生も良いが、根本的に問題を解決するには国の仕組みを変えないと駄目で、私は消費税を地方財源にもっとすべきだと思う。さらに47都道府県をやめて九州、四国、中国、東北6県など、大きなブロックに再編する。それでやっと戦える。ところが毎日のように大きな選挙があるから、それをやる暇がないという。
 根本的な問題を回避しながらの小手先の地方再生では動かない。しかし、そうは言っていられないので、東京が日本各地と連携して取り組む産業振興施策「ALL JAPAN&TOKYOプロジェクト」を作った。その中で、調達情報などを全国の中小企業に提供するポータルサイトを4月から動かし始める。五輪・パラリンピックに向けて、全国の中小企業の受注機会を増やすつもりだ。
 過去20年間のデフレで日本の力はそがれたが、日銀は頑張ってマイナス金利をやっている。東京は産業政策、経済政策でそれを支えないといけない。バブル崩壊後、金融機関のアジア拠点は全部、英語が公用語のシンガポールに行ってしまった。私はそれを取り戻そうと一生懸命やっている。いずれ東京では、全部英語で会社を設立できるようにしようと思う。福岡市や北九州市が伸びようとするなら、英語が通じる街にすることが一番だろう。
 一方、税金を使わずどうやって街を変えるかというのが非常に重要と考えている。今、取り組んでいるのは規制緩和だ。東京は土地の値段が高く、保育園を作ろうとしても土地がない。それで国家戦略特区構想を使って公園の中に作り始めた。これなら税金を使わず、土地の値段もいらない。国有地や都有地、区有地は、全部賃料を安くしているので、福岡の事業者も東京に来て、介護老人保健施設や特別養護老人施設も作って下さい。また、虎ノ門ヒルズという道の上をまたがるビルも規制緩和で作った。都道の上だから土地代がいらない。国と協力して道路の上に建物を作っていいという規制緩和をやった。五輪・パラリンピックで人がたくさん来るから、福岡もこういう特例を利用してやるべきだと思う。
 1964年の東京五輪では、敗戦から立ち直るために頑張った。しかし、経済成長一本槍で、公害などいろいろなマイナスが出てきた。これからは、単なる経済成長ではなく、ゆとりがある街にしていく。そのためには働き方の改革、週休3日制をやろう思う。ぜひ福岡で先駆けてやってみてほしい。なぜそれが必要かというと、働き方の効率が悪すぎるから。女性が働き、男性もちゃんと家庭と両立する。そういう社会にしない限りは駄目だと思っている。週休3日で休みを分け合ったら、土日は空いていない役所の手続きに代わりに行くとか、高齢の両親の面倒を代わりに見ようとかできる。もちろん企業や職種によって状況は違うが、誰かが言わないと何も変わらない。それをやろうと思っている。
 よその街で良いところはまねて、駄目なところはまねない。それが基本にある。五輪・パラリンピック前の2019年は、福岡や九州も会場となっているラグビーW杯があり、絶対利用すべきだ。

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