毎日・世論フォーラム
第284回
平成28年2月18日
スポーツ庁長官 鈴木 大地

テーマ
「スポーツ庁の創設と新たなスポーツ行政」

会場:西鉄グランドホテル

メダル獲得で競技力向上を

鈴木 大地 スポーツ庁長官
鈴木 大地 氏

プロフィール

鈴木 大地
(すずき だいち)

1967年3月、千葉県習志野市生まれ48歳。順天堂大学大学院体育学研究科コーチ学修了(体育学修士)。88年ソウル五輪では背泳100mを“バサロ泳法”で優勝し、日本人スイマーとしては72年ミュンヘン五輪以来、16年ぶりの金メダルとなった。現役生活引退後は、母校である順天堂大学教授(医学博士)に。2013年には日本水泳連盟会長に就任。15年9月、スポーツ庁の初代長官に就任。

 第284回例会は、昨年10月に発足したスポーツ庁の鈴木大地長官が「スポーツ庁の創設と新たなスポーツ行政」と題して講演、会員150名が参加した。
 鈴木長官は今夏のリオデジャネイロ五輪での金メダル獲得目標数が2桁であることを挙げ、「メダルを獲得することは国民に感動を与えるだけでなく、国民が体を動かしてみようという気にさせてくれる。結果的に競技力の向上につながる」と話した。またスポーツ庁内に経済産業省と「スポーツ未来開拓会議」を設置し、スポーツ市場の収益を環境整備に充て、スポーツ人口が増えることで市場を活性化させる好循環のビジネスモデルを探ることなどを話した。「第二次世界大戦後に日本人の心を勇気づけたのはスポーツであり、東日本大震災の後も小柄な(女子サッカーの)なでしこジャパンが和をもって優勝し、日本人の本来のよさを見直させてくれた。だが、まだスポーツの持つ力を国民に理解していただいているとは言えず、理解してもらえるように頑張りたい」と語った。講演要旨は次の通り。

 25歳まで競泳選手やっていました。その後、大学教員の方に進みまして、昨年9月30日まで順天堂大にいました。その間、日本水泳連盟会長もやらせていただき、10月1日からスポーツ庁を率いることになりました。
 スポーツ庁は、平成23年にスポーツ基本法が制定され、文部科学省の外郭団体として創設されました。主な課題は多く分けて4つがあります。一つ目はスポーツによる健康増進、二つ目は国際競技力の向上、三つ目はわが国の国際的地位の向上、四つ目はスポーツによる地域、経済の活性化です。
 スポーツ庁の来年度の予算は324億円です。今年度は290億円だから、前年比34億円、11%の伸びです。10%以上の伸びている省庁はなかなかなく、文科省でもスポーツ庁だけです。それだけに成果を出さないといけないと思っています。今年は夏にリオデジャネイロで五輪、パラリンピックがあります。競技力向上は143億円と多くを占めています。ものすごい額にも見えますが他の先進国に比べるとまだまだ少ない訳です。
 前回の2012年のロンドン五輪では7個の金メダル、計38個のメダルを獲得しましたが、リオ五輪ではこれを上回らなければいけない。パラリンピックもいよいよ国が本腰を上げて強化に取り組んできたので、これまでの成績を超えるぐらい頑張っていきたい。そのために国が支援をしながらやっていますが、JOCの目標では金メダル2桁14個程度、20年の東京五輪では金メダル獲得ランキングで世界3位、20~30個取りたいと言っております。これまでは1964年の東京五輪、アテネ五輪の16個が最高です。次の東京大会ではそれを上回ることが求めらられております。我々がなぜ、メダルにこだわるかというと。金メダルを取ってくれたら、うれしいですし、感動します。でも、それだけではなく、国民がメダルに感化されて、明日からジョギングやってみようかな、体を動かしてみようかなと行動変容があるわけです。五輪での活躍を見て、自分もやってみようかなというのが現象として起きます。
 スポーツ庁はスポーツを通じて国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現を目指し、全力で取り組んでまいります。
 申し上げたいことの一つは、日本がこれだけ先進国として発展してまいりました。ただ、第2次世界大戦の時には焼け野原になった時に、日本人の心を勇気づけたのはスポーツであります。我々の大先輩の古橋広之進さん、橋爪四郎さんが世界記録を出して外国の人を打ち負かせて、あれで日本人はもっと頑張れるぞという気持ちにさせてくれたのではないかと思います。
 そして最近では、2011年3月11日から明るい気持ちになれない日が続いていましたが、サッカーの女子日本代表「なでしこジャパン」が世界一になりました。その時に小柄ななでしこジャパンの選手がチームワーク、和でもって勝利するわけですね。あれで日本人が変わってきたのではないかと思います。体が小柄でも体力的に不利でもチームワーク、和があれば、外国人に勝つことができるということをスポーツが示してくれたのはないか。なでしこジャパンの優勝で日本人が元気になり、日本人の本来のよさを見直せたと思っています。
2012年のロンドン五輪では日本選手団の頑張りがありました。38個のメダルをとって、銀座でパレードしたんですね。集まった人たちは50万人。銀座が鈴なりになりました。その絵を上からとった写真。これが非常に効いて、国際オリンピック委員会(IOC)総会で20年の東京五輪が決定しました。
あまり気づいていないかもしれませんが、スポーツの力というものはものすごいものががあるというのを実感しています。まだ、スポーツの力を国民のみなさんに理解してもらっていないということもあるかもしれません。我々も全力でスポーツの力というものを幅広い面からお伝えするために頑張っていきたいと思っています。

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