毎日・世論フォーラム
第266回
平成26年6月25日
民主党前幹事長 細野 豪志

テーマ
「野党再編と国政の行方」

会場:ソラリア西鉄ホテル

代表交代論と距離

細野 豪志 民主党前幹事長
細野 豪志 氏

プロフィール

細野 豪志
(ほその ごうし)

1971年8月、滋賀県出身の42歳。95年3月京都大学法学部卒業。00年の衆議院総選挙で民主党公認として静岡7区(現5区)から出馬し、初当選。以降、5期連続当選。11年3月11日の東日本大震災で、原発事故対応担当大臣、民主幹事長に。13年7月の参院選で民主党は大敗し、細野氏は幹事長を辞任。今年、党内にグループ『自誓会』を立ち上げた。

 第266回例会は、民主党の細野豪志前幹事長が講演、会員160名が参加した。細野氏は、党内での代表選前倒し論が出る中、海江田万里代表が7月下旬に1年の総括を行う考えを表明したことに触れ、「代表が降りる、降りないの議論ではなく、どうやって政権をもう一回取れるかを真剣に考えたい」と述べた。党内にある代表交代論とは距離を置く考えを示したものだ。
 また、民主党の現状について「今の国会の議席では『(次は)民主党だ』と思ってもらえる状況にはない」と指摘。「他党との選挙協力、政策合意が必要で、(統一)会派を考える時期が来るかもしれない」と述べ、野党再編や連携の必要性を強調した。講演要旨は次の通り。

 集団的自衛権の問題で、非常に私は無力感を感じる。果たして閣議決定で決めて本当にいいのか。憲法41条に国会は国権の最高機関と書かれている。立法機関である国会が国に関わる基本的な方針を決め、そのもとで法律を誠実に執行するのが行政の役割だ。今はまったく逆になっている。行政が閣議決定によって憲法解釈を変え、それに基づいて提案する自衛隊法や周辺事態法を国会で議論して決めて下さいと。国会が行政の下請け機関のように扱われている。この状況は主権者たる皆さんにも危機感を持ってもらいたい。
 もう十数年前の話です。小泉政権で有事法制が大議論になり、民主党内にも反対意見があった。自民党は衆院で圧倒的多数の議席を持っていて、小泉首相への世論の後押しも大きかったが、小泉首相は安全保障の重要な問題は与野党を越えて議論する方がいいだろうと判断され、1年間、有事法案の提出を先延ばしした。このやり方をなぜ安倍政権は取れないのか。公明党も平和の党という看板を掲げるのであれば、なぜこれほどの問題で妥協するのか。今の政治は忖度(そんたく)政治だ。誰を忖度するのか。安倍首相だ。永田町、霞ケ関、事務次官を替えられた役所は震え上がっている。
 安全保障の問題で、最も真剣に考えないといけないのは尖閣諸島の問題です。海上保安庁と海上自衛隊がどう連携していくか。これは集団的自衛権でなく、自衛に関わる問題だ。積極的に領域警備法を提案していこうと思う。次の懸念は朝鮮半島有事です。周辺事態法に基づき、わが国は米軍への物資輸送や食糧供給などに関与する。例えば米国が海の上で攻撃を受けた時、自衛隊は対応しなくていいのか。米国艦船の防護、臨検についても議論を深めていくべきだ。
 しかし、集団的自衛権という形でアプローチしていくのはやや議論がある。これまではある国から協力を求められても、我が国は憲法上、集団的自衛権を行使できないと言い逃れができた。行使を認めるとさまざまな広がりが出てくるので、自衛権をしっかりと再定義していくべきだと思う。自衛権の再定義は集団的自衛権という概念ではない。個別的自衛権の中で収まらない問題について、どう関与していくかを議論していかないといけない。一歩前に出て、安全保障基本法について議論を深め、提案していくタイミングに来ている。
 昨日、民主党の両院議員総会があった。代表選をした方がいいという議論もあったが、みんなの思いは一緒だ。なんとしても党を立て直し、さらには政権交代の可能性をもう一度という思いなんです。次の戦いに備えなければいけない。それが来春の統一地方選挙だ。この1カ月で、もう一回政権にチャレンジできるかを真剣に考えたい。政権を担うのは旗印が必要だ。私が考えている旗印を三つ紹介します。
 まずは多様性という旗です。安倍政権は成長戦略という考えで女性が働きやすい職場を考えているが、女性が働くか、家庭に入るか、結婚するか、子どもを産むか、いろいろな選択を自らの判断でできるような環境を整える事が政治のやるべきことではないか。
 地域主権も掲げるべき旗としてある。地域主権は安倍政権になって完全にストップし、逆行している。自治体が金の使途を決められる一括交付金制度は廃止され、補助金に戻った。安倍政権は極めて中央集権的だ。我々はもう一度地方に権限と財源を戻したい。
 もう一つは社会保障だ。安倍首相は社会保障に関心がない。消費増税も含めて税金の使い方、社会保障、教育とかも我々が言っていかないといけない。
 しかし残念ながら、皆さんから民主党だと思っていただける状況にない。他党との連携、選挙協力もしていかなければならない。政策の合意も必要でしょうし、国会の会派について考える時期が来るかもしれない。そのときに最も明確に立てるべき旗は地域主権だと思う。中央集権的な国であり続けるのか、それとも地域主権の社会を作っていくのか。その選択肢を民主党が中心となり、賛同する他の野党と一緒に示す役割を果たしたい

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