毎日・世論フォーラム
第323回
2019年11月25日
自民党 衆議院議員 元防衛相 中谷 元

テーマ
「憲法改正 いかにあるべきか」

会場:ソラリア西鉄ホテル福岡

憲法9条の解釈の曖昧さを指摘

中谷 元 自民党 衆議院議員 元防衛相
中谷 元 氏

プロフィール

中谷 元
(なかたに げん)

1957年10月生まれ。防衛大卒。陸上自衛官を経て90年に衆院議員に初当選し、当選10回(高知1区)。2001~02年に防衛庁長官、第三次安倍内閣の14~16年に防衛相などを歴任した。自民党「憲法族」として野党との協議も重んじ、衆院憲法審査会与党筆頭幹事を務めた。19年10月、自民党憲法改正推進本部長特別補佐に就任した。自民党谷垣グループの代表世話人。防衛大時代にラグビー経験があり「国会ラグビークラブ会長」「ラグビーワールドカップ2019日本大会成功議員連盟」会長も務めた。

 自民党憲法改正推進本部長特別補佐で元防衛相の中谷元衆院議員は11月25日、福岡市のソラリア西鉄ホテルで開かれた毎日・世論フォーラムで、約110人を前に「憲法改正 いかにあるべきか」と題して講演した。衆参両院の憲法審査会について「与党は度量を、野党は良識を持って議論してきた。憲法議論と政局は切り離すべきだ」と述べ、「桜を見る会」を巡る問題などで議論が停滞しないようにすべきだと主張した。
 中谷氏は、日本を取り巻く安全保障環境の変化や、安全保障関連法の制定経緯を解説した上で、憲法9条の解釈が曖昧だと指摘。「国民が納得、理解、共感して初めて自衛隊は機能する。この手続きが今の憲法ではされていないのが一番の問題だ」として、憲法に自衛隊を明確に位置づけるべきだと強調した。講演要旨は次の通り。

 平成になって冷戦が終わった。世界の平和は誰が守る、ということで、やはり日本も何か貢献をしないと駄目だという状況になった。その例が1990年の湾岸戦争。国連で制裁決議が出た。日本は多国籍軍に参加できるかどうか、憲法議論になって国会は大変になった。(こうした状況下で92年にPKO協力法が成立し)停戦合意や中立性の厳守などを満たせば憲法に違反しないということで、PKOでカンボジアなどに行った。
 もう一つは北朝鮮で核開発が始まり、ここでできたのが周辺事態法だ。日本にいる米軍が朝鮮に行ったとき、日本は憲法上どこまで手伝えるかが現実問題になった。我が国の安全に影響を与える事態ということで、後方地域支援という概念を作った。戦闘が行われておらず、その期間を通じて戦闘がないときは後方支援できるという理屈だ。
 イラクの戦闘が終わったときには(特措法により)イラク復興支援をしたが、これも憲法違反ではない。かなりの危険はあったが、自衛隊は安全を確保しながら支援できた。そういうことで、世界平和のために日本が憲法上できることはまだまだある。
 安全保障法制では、今までの法律をまとめて、邦人の保護、米軍の武器防護や、PKOとか国際連携平和活動ということもできる。周辺の国々の紛争では重要影響事態というメニューも作った。存立危機事態など(集団的自衛権行使の)新3要件も。野党はこれを憲法違反と言うが、我々が存立の危機にあるときに、助けてくれる国を守らなくてどうして守られようか。これは憲法の範囲だ。ただ、国会は大乱闘の末の採決だった。憲法には幅がある。「国民を守るために必要な法案だ」ということも成り立つし、「自衛隊は違憲で何もしちゃいけない」ということも成り立つ。私がそのときに感じたのは、平和法制は憲法違反なのか、自衛隊はどの範囲まで活動できるか、国を守るにはどうするのか、これを決めるのは、裁判所ではない。国民だ。国民がどの範囲まで自衛隊を容認するかということだ。
 やはりこれは国民投票で自衛隊というものを位置づける必要がある。自民党ができたときから憲法改正の動きがあって、議論をしてきた。冷戦が終わり、実際に憲法草案を作ったり、国民投票法を成立させたり、衆参両院にその議論の場を設けたり、ようやく平成24年に自民党の改正試案、草案を発表した。これをもって国民的な議論をしてほしいということで、自民党は提案をしている。
 ただ、今の状況は、国会は本当に2年も3年も何やっているのと。一向に議論が行われない。この前ようやく海外視察の報告と称して、ようやく自由討論はできたが、それで終わっている。国民投票法。これは趣旨説明は2年前に終わっているので、あとは採決だけ。普通の国会ならもう上がっていなければおかしい。
 昨日(11月24日)、高知県で知事選があった。自民党、公明党の浜田さんが61パーセント。松本さん、共産党の人が39%。与党側が圧倒できたが、私がふと思ったのは、もし共産党の総理とか知事ができたらどうなるのかということだ。自衛隊が訓練することも反対するのではないか。そうすると、いざというときに自衛隊が動けない。野党は平和安全法制は憲法違反と言っているので。国の責務は国民の命、領土、主権を守ることで、この根拠として自衛隊がある。だが、法律がなければ自衛隊も動けない。
 従って自衛隊の記述が憲法にないということで、自衛隊に反対する人はぜひ、憲法の改正を主張していただきたい。自衛隊を私たちは認めているから、憲法改正する必要はないのではないかという人がいますが、それなら憲法改正してくださいと私は言いたい。やはりきちんと手続きをとって、国民のみんなが納得して、理解して、共感して、初めて自衛隊は機能する。この手続きが今の憲法ではされてないというところが一番の問題ではないか。
 最後に日本の安全保障。ロシア、中国は半島をつたって沖縄とか、青函海峡で外へ出よう出ようとしている。それを日本が止めている。日本の周辺の国々の軍事力。陸上の兵力は中国が160万、インド、北朝鮮102万、アメリカ51万、韓国50万、日本は14万、ベスト10にも入っていない。海軍はアメリカ、ロシア、中国。飛行機もアメリカ、中国、ロシア、日本はベスト10にも入っていない。何が言いたいかというと、軍事力の強い国に、日本は囲まれている。しかもほとんどの国は核を持っている。核を持てばいいという話ではないが、やはりこのパワーバランスの関係で、日本ももっとしっかりしていかないといけない。
 さまざまにこれから世界は変わっていくが、日本がしっかりと主体的な国家として、いろんなことを言って、できるためにも、まずはおおもとの安全保障の憲法、これをしっかり改正していく必要があるのではないかということでお話をさせていただいた。

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